【特別寄稿】「森の香りのそこから先」北海道大学 松永壮

本日より2日間、特別寄稿として北海道大学 松永壮博士による研究の紹介を致します。タイトルは「森の香りのそこから先」です。

森の香りのそこから先

北海道大学苫小牧研究林 松永 壮

  • 森の香り

 みなさんは、森の香りを感じたことがありますか?森はきれいだし、なんとなくリラックスするから、なんとなくいい香りが漂っているように感じるだけなのでしょうか。実はそうではありません。森の木々は実際に、様々な種類の香りガスを放出しているのです。これらの香りガスは、意外にも大変低濃度で、香り豊かな森の空気の中でさえもたった1億分の1パーセントくらいしか入っていないのです。しかし、私たちはそれらの香りをしっかり感じることができるのですね。この香りガスは1960年代にアメリカで発見されたことから研究が始まりました。研究が進むにつれて、森から放出される香りガスは、様々な形で地球環境に大きな影響を与えていることが分かってきました。最近の研究では、これらの香りガスが地球全体の温暖化や寒冷化など大きな環境変動の中で重要な働きをしていること、意外なことに光化学スモッグの発生など有害な現象にも関わっていることなどが分かってきました。

  • 香りガスの正体:生物起源VOC

これまで私は、生物起源揮発性有機化合物(Biogenic Volatile Organic Compound: BVOC)に注目した研究を進めてきました。BVOCは、主に樹木の葉から放出されます。BVOCの全球での放出量は、人為汚染起源の揮発性有機化合物(VOC)に比べ、なんと10倍以上も大きいことが知られています。またBVOCの多くは大気中での反応性が非常に高いため、大気へ放出されたBVOCは森林周辺の大気環境だけでなく、温暖化や寒冷化など大規模な、地球全体の気候変動においても重要な役割を果たしています。また、BVOCの放出量そのものもまた環境(気温や日射強度)の影響を強く受けることから、上の図に示したように、BVOCと地球環境の間にはいくつかのフィードバック(何かの現象が起こるとそれが巡り巡って最初の現象に再び作用すること)が考えられます。こうした背景から、BVOCの研究は最近20年の間に大変盛んになりました。現在、主要なBVOCとして最も広く研究されている化合物として、イソプレン(C5H8)、モノテルペン類(C10H16)、セスキテルペン類(C15H24)などがあげられますが、未測定のBVOCもまだ多く存在することが複数の研究から指摘されています。BVOCの特徴や、最新のBVOC研究で分かってきたことを以下に紹介します。

続く


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