ヤマトシジミにおける福島原発事故の生物学的影響、に関する反響について

福島原発の事故に関する昆虫への影響に関する記事が先月発表されて、間もなく2ヶ月がたとうとしている。本記事は東北地方でのヤマトシジミの突然変異率が他地域に比べて非常に多く、これを福島原発事故の影響と結論づけているものだ。しかしながら内容が非常にデリケートなものであるために異論、反論が噴出している。

反論、疑問点の内容としては下記のようなものがある。

1.生息北限の東北地方ではそもそも突然変異率が高いので、これを放射能に原因を求めるのは無理がある。
2.より北の青森県との比較が必要なのでは?
3.津波による土壌の塩分増加や植物への影響を排除できない
等一流雑誌に掲載されたとは思えない非常に論理的な不備が認められることだ。

 

しかしながらこの事故のお陰でネット上ではあるが議論が活性化している。

はてなブックマーク – ヤマトシジミの異常は原発事故の影響? – Togetter http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/353759

でも上記の疑問点が述べられており、その議論の内容は研究論文のpeer review(論文審査)とほぼ同等である。このような議論が今後より多く活発化し、禍転じて…ではないが、科学的リテラシーの向上に貢献して欲しいと思う。

 

参考:
ヤマトシジミにおける福島原発事故の生物学的影響| Scientific Reports | NPG Nature Asia-Pacific http://nature.asia/QfKM6o

ヤマトシジミにおける福島原発事故の生物学的影響

The biological impacts of the Fukushima nuclear accident on the pale grass blue butterfly

2012年8月9日 Scientific Reports 2 : 570 doi: 10.1038/srep00570 (2012)

福島第一原子力発電所の損壊では、大量の放射性物質が環境に放出された。この事故が動物に与えた生物学的影響を評価するための迅速で信頼性のある実験系はこれまでに考案されていない。本論文では、日本で一般的なシジミチョウであるヤマトシジミ(Zizeeria maha)に対してこの事故が生理的および遺伝的な障害を与えたことを明らかにする。我々は、第一化の成虫を2011年5月に福島地域で採集したが、その一部には比較的軽度の異常が認められた。第一化の雌から得られた子世代F1に認められた異常は重度が高く、それは孫世代F2に 遺伝した。2011年9月に採集された成虫の異常は、5月に採集されたものと比較して重度が高かった。非汚染地域の個体に対する低線量の外部被爆および内 部被曝により、同様の異常が実験で再現された。これらの結果により、福島の原子力発電所に由来する人為的な放射性核種がヤマトシジミに生理的および遺伝的 な障害を与えたと結論される。

檜山 充樹1*, 野原 千代1*, 金城 聖良1, 平良 渉1, 儀間 真一2, 棚原 朗2 & 大瀧 丈二1

  1. 琉球大学理学部 海洋自然科学科
  2. 琉球大学 機器分析支援センター

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