アゴラ早版:文科省学術分科会、第6期研究費部会「科研費の在り方について」を読んで

科研費申請書類の例。

本表題は文科省による基礎研究のための科学技術研究費(科研費)に関するあり方を考える場として定期的に開かれているものである。今回の大まかな点としては基金化の拡大、新学術領域研究の見直し、プロジェクト研究における採用される側のPDの裁量権の拡大、などが議論されている。

その中でも若手研究者に対する緩和について、日経の宮田氏は諸手を挙げてPDの奴隷解放宣言であると論じている。そこまでのドラスティックな改革であるのかと気になり読み進めてみた。その内容は下記のHPの中に記されている。おそらく平成23年12月提言、及び3新学術領域研究の見直し、の中に記されているものが主なもの思われる。以下のとおり。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/022/attach/1320283.htm

5(3)文部科学省及び公的研究機関に求められる事項

1)公的研究費により若手の博士研究員を雇用する公的研究機関及び研究代表者に対して、若手の博士研究員を対象に、国内外の多様なキャリアパスの確保に向けた支援に積極的に取り組むよう公募要項等に記載する。

2)若手の博士研究員の能力開発に要する経費は、研究活動を支える基盤的な経費であるとの考え方に基づき、上記の申請書に記載したキャリア支援活動計画に基づく若手の博士研究員の活動の一部を、研究エフォートの中に含めることができることを記載する。

3)中間評価や事後評価においては、各事業の目的や特性に応じて、上記のキャリア支援活動計画に基づく取組状況や若手の博士研究員の任期終了後の進路状況を報告させ、プラスの評価の対象とすることを記載する。

3(2)科研費から若手研究者等の人件費を支出可能とし、複数PIの活動拠点として継続的な研究が行えるような組織を整備できるようにする。

その他に基金化、についてに関しても若手研究者に配慮がなされている。

しかしながら奴隷解放宣言であるとまでは言えないのではないか、確かに進歩はしているようなので評価はできるのだが、これでドラスティックに解決に向かうかというとそうとはならないと考える。それは

(1)PD余剰は公務員削減の中人件費を増やさない限りは解決せず、現在のところこの提言でも記されているようにプロジェクト研究費の有期雇用による人件費によって賄われていること。

(2)そのような状況の中、プロジェクト研究のリーダーにとっては買い手市場であることには変わりがないので、依然としてラボのボスの言いなり状態には変わりがない。

(3)エフォートに裁量権が与えられ、プロジェクト研究以外のエフォートを評価するとの文言だが、書類上のエフォートになる可能性がある、即ち実質的にはプロジェクト研究100%までは行かないまでも時間外に行うなど、およそ奴隷解放とは言いがたい状況になる可能性がある。

これらの解決は何から何まで足りないので非常に難しいが、少なくとも以下の点を融合するべきだろう。

(1)大学の受け皿の増加(財源は乏しいが研究スペースは余っているはずである→薄給だが独立したポストを与える)

(2)研究費申請の評価をさらにアイデア勝負に(実績より期待値を優先、評価する側、される側の一層の改革が必要)

(3)研究費の使用制限緩和、裁量権の拡大(NSFのように一部給与として認めるなど、基金化や一部研究費を人件費に回すなど評価できるが議論の進展がとにかく遅い)

(4)一般の寄付、及び企業のこれまで以上の積極的な参加(啓蒙が不可欠)

(5)広く浅く(日本では概ね達成していると考えるが5の徹底の基、上記1-4で相乗効果が期待される)

これらの議論を醸成するにはネガティブな日本的考え方が邪魔をして事はなかなかうまく進まない。切り口はどこかを現在思慮しているところである。

松本 公平 (MATSUMOTO Kohei Ph.D., Geoscientist)

Twitter: @MATSUMOTO_K_PhD(最近変更したので@Globalcyclesのほうが出てくるかもしれません)

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