行列のできる共分散構造分析(SEM)その3

勢い余ってその3まで来てしまった。もう1~2回くらいはいけるかもしれない。

さて前回はどのようにして分散共分散行列を求めればよいか、まで説明した。今回は実際の例で数値やパラメーターを使って示したいと思う。

ここでは実際のサイクルロードレースで勝つためのノウハウを簡単にパス図で示した。前にも行ったがこれ以外の要因も多数あり、今回はシンプルに記すため4つのパラメータとした。勝つためのノウハウとしてターゲットレースに向けての計画だったトレーニング、実際のレースにおいてマーク、自らレースを展開するなどの読み、その裏には格好良く優勝したい、という心理、モチベーションがあるだろう、、、とする。以下、パス図である。

sem2
それぞれのパス係数を設定した(b, a23)。これをもとに分散共分散行列を計算してみよう。
t = At + u の形に即して
\begin{bmatrix}  f\\  {x}_{1}\\  {x}_{2}\\  {x}_{3}  \end{bmatrix} =  \begin{bmatrix}  0 & 0 & 0 & 0 \\  b & 0 & 0 & 0 \\  b & 0 & 0 & {a}_{23}\\  0 & 0 & 0 & 0  \end{bmatrix}  \begin{bmatrix}  f\\  {x}_{1}\\  {x}_{2}\\  {x}_{3}  \end{bmatrix}+  \begin{bmatrix}  f\\  {e}_{1}\\  {e}_{2}\\  {x}_{3}  \end{bmatrix}
\sum {}_{u}=  \begin{bmatrix}  {{\sigma }^{2}}_{f} & 0 & 0 & 0 \\  0 & {{\sigma }^{2}}_{e1} & 0 & 0\\  0 & 0 & {{\sigma }^{2}}_{e2} & 0\\  0 & 0 & 0 & {{\sigma }^{2}}_{x3}  \end{bmatrix}
そして推定するべきパラメーターは下記の6つとなる。
θ’ = (b a23 σf^2  σe1^2  σe2^2  σx3^2)

Σxxの部分はこのようになる(その2の式と同じ)。

{\sum}_{xx} = F \sum F' = F{ (I-A)}^{-1} {\sum }_{u}{(I-A)}^{-1'}F'

まずは(I-A)^-1の部分であるが、AA=0(計算してみよう)であるため下記のように簡略可能である。
(I-A)(I+A) = I + A – A – AA = I
よって
(I+A) = (I-A)^-1
よってI+Aを計算すれば良い。
(I-A)^-1 = I+A =

\begin{bmatrix}  1 & 0 & 0 & 0 \\  0 & 1 & 0 & 0\\  0 & 0 & 1 & 0\\  0 & 0 & 0 & 1  \end{bmatrix}+  \begin{bmatrix}  0 & 0 & 0 & 0 \\  b & 0 & 0 & 0\\  b & 0 & 0 & {a}_{23}\\  0 & 0 & 0 & 0  \end{bmatrix}=  \begin{bmatrix}  1 & 0 & 0 & 0 \\  b & 1 & 0 & 0\\  b & 0 & 1 & {a}_{23}\\  0 & 0 & 0 & 1  \end{bmatrix}

次にフィルター行列以外の部分を計算してみよう。先ほど示したθの関数であることを強調するためにΣ(θ)とする。
\sum (\theta )=  \begin{bmatrix}  1 & 0 & 0 & 0 \\  b & 1 & 0 & 0\\  b & 0 & 1 & {a}_{23}\\  0 & 0 & 0 & 1  \end{bmatrix}  \begin{bmatrix}  {{\sigma }^{2}}_{f} & 0 & 0 & 0 \\  0 & {{\sigma }^{2}}_{e1} & 0 & 0\\  0 & 0 & {{\sigma }^{2}}_{e2} & 0\\  0 & 0 & 0 & {{\sigma }^{2}}_{x3}  \end{bmatrix}  \begin{bmatrix}  1 & b & b & 0 \\  0 & 1 & 0 & 0 \\  0 & 0 & 1 & 0 \\  0 & 0 & {a}_{23} & 1  \end{bmatrix}
=  \begin{bmatrix}  {{\sigma }^{2}}_{f} & b{{\sigma }^{2}}_{f} & {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & 0 \\  b{{\sigma }^{2}}_{f} & {{\sigma }^{2}}_{e1} + {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & 0\\  b{{\sigma }^{2}}_{f} & {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & {{\sigma }^{2}}_{e2} + {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} + {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3}& {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3} \\  0 & 0 & {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3} & {{\sigma }^{2}}_{x3}  \end{bmatrix}
て計算するのもLatexの記述も大変である。これにフィルター行列を掛けあわせてみる。
と入ってもこの中身をまだ具体的に説明していない。これは作成した分散共分散行列に対して、
1行少ない
左1列は0行列
残りは単位行列
というシロモノである。行列で書くと F=[0 Ip] となる。ここでトライしているものに即した形だと
F = \begin{bmatrix}  0 & 1 & 0 & 0\\  0 & 0 & 1 & 0\\  0 & 0 & 0 & 1  \end{bmatrix}
これを左から掛け、右側からはFの転置行列を掛ける。そうすると見事に1行1列少なくなるのである。
{\sum }_{xx}(\theta )=  \begin{bmatrix}  {{\sigma }^{2}}_{e1} + {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & 0\\  {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & {{\sigma }^{2}}_{e2} + {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} + {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3}& {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3} \\  0 & {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3} & {{\sigma }^{2}}_{x3}  \end{bmatrix}
これこそが共分散構造そのものの具体像である。これを実際の数値と比較して最尤推定すれば良い。
例えばこんな感じである。
[実データ:数字は適当である]                [モデル]
S=  \begin{bmatrix}  1.566 & & \\  1.002 & 2.102 & \\  0.234 & 0.798 & 2.538  \end{bmatrix}  \Leftrightarrow    \begin{bmatrix}  {{\sigma }^{2}}_{e1} + {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} &\\  {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} & {{\sigma }^{2}}_{e2} + {b}^{2}{{\sigma }^{2}}_{f} + {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3}\\  0 & {{a}^{2}}_{23} {{\sigma }^{2}}_{x3} & {{\sigma }^{2}}_{x3}  \end{bmatrix}

さて次回は最適化のロジックに行く前に各種パス図を紹介したいと思う。


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