(アゴラ早版)子供の犯罪は凶悪化しているのか

アゴラ早版で出稿します。なにか疑問点有りましたらなんなりとコメントください。

 

【はじめに】
大津のイジメの問題が巷で騷がれてもう数ヶ月となる。イジメの問題は今に始まった話ではなくこれまで何度もマスコミ等で取り上げられてきた。昔からあっただろうが自分のイジメに関する朧気な記憶としては80年代後半くらいからマスコミで取り上げられたような印象がある。その前は未成年の主な犯罪としてマスコミが取り上げていたのは不良、校内暴力や暴走族、リンチ殺人などだろうか。勿論印象なので実際の数字は調べる必要がある。

さてこの未成年の犯罪は本当に年を追うごとに凶悪化しているのか、というのが今回のテーマである。凶悪化の定義は様々あるだろうが指標になりうる一つは殺人事件に代表される凶悪事件の増加があげられるだろう。その他にも強盗や放火、窃盗などがあり、これらを比較することで少年犯罪の時系列について議論していく。

 

【使用したデータと方法】
データは警察庁の統計データがあるが、それらをコンパイルした「少年犯罪統計データ(1)」というサイトが非常に有用であったので引用した。
データ範囲は昭和21年、戦後からのデータを使用した。内訳は殺人、強盗、強姦、強制猥褻等、放火、詐欺、窃盗、横領、及び総数である。また戦前に関してはデータもあるのだが今回は割愛した。また絶対数では評価が難しいので人口10万人で規格化した数値を用いた。

 

【結果と考察】
2つのグラフを掲載した。横軸に1946年以降の西暦、縦軸は人口10万人辺りの犯罪件数となる。人口は第2時世界大戦後右肩上がりで増えているので規格化することが妥当である。件数は見やすさの観点から対数表示とした。まずは件数の少ない犯罪について図1に示した。

図1。戦後における10万人辺りの少年犯罪件数。比較的件数の少ない犯罪を取り上げてプロットした。

件数の少ない犯罪≒凶悪犯罪といって差し支えない。これを見ると戦後1960年台にどの犯罪も大きなピークを持つ。校内暴力が取り沙汰された1980年台は実はそれ程凶悪犯罪は増えていないむしろ大きく減少していることが分かる。この減少傾向はバブル相場と逆相関しているとも考えられる。いわゆる金持ちケンカせず、の可能性がある。その後犯罪件数は少し増えるものの戦後すぐの時期には及ばずに現在に至っている。

図2。戦後における10万人辺りの少年犯罪件数。総数も含め比較的件数の多い犯罪を取り上げてプロットした。

次に件数の多い犯罪を図2としてプロットした。これには少年犯罪の総数も同じ図上にプロットしてある。先ほどの凶悪犯罪と同様な傾向を示すものは強盗、暴行、詐欺である。そしてほとんど件数が変化しない犯罪は傷害、恐喝、窃盗である。また横領のみ戦後から一貫して増え続けている。これは人の自転車を勝手に使用したりなどする犯罪が含まれている。「少年犯罪は急増しているか(2)」でも述べられているが、警察のアクティビティーが上がった可能性もある。更には子供の持ち物が、例えばケータイやゲーム機等の遊具が年を追うごとに多様化し、増加していることに起因しているかもしれない。何れにしても変化しない、または増加している犯罪はその中でも軽微なものである。そして総数はその軽微な犯罪を取り締まるために増加傾向となっている。

因みに戦前の犯罪は「戦前の少年犯罪(3)」にも記されているが、戦後すぐの件数とほぼ同数であり現在より高い。また凶悪犯罪や小学生の殺人などが頻発していたとの記述がある。ここでは記述できないほど残虐な事件が多く見受けられる。これより凶悪犯罪に関しては質的量的にも、現在が如何に少ないかが明らかとなった。このことは年配の人間がよく用いる「近頃の若い者は…」、「昔は行儀が良かったのに云々…」や、「少年犯罪は凶悪化しているか(4)」に見られるような少年犯罪の特異化を取り上げて危機感を煽る、といった文言はマクロ的視点から見ると誤りと言わざるをえない。

また凶悪犯罪についてマスコミもこぞってこれらに近い文言で「世の中どうなってしまったのか…」等といった言葉を頻繁に用いているが、これも致命的に調査不足である。
ただマスコミに関してはワイドショーなどで稀に起こる凶悪犯罪を執拗に取り上げることによる抑止力は主婦向けには働いているかもしれない。

 

【結論】
本調査での結論を以下に示す。
1.子供の凶悪犯罪は年を追うごとに減少している。
2.軽微な犯罪については件数は変化しないか横領のように件数が増えている犯罪もある。犯罪取締が強化されたのと子供の持ち物が豊かになった可能性も示唆される。
3.1950-1960年代の凶悪犯罪が最も多く、この世代の人間が「近頃の~」と言及している場合はマクロ的には虚偽である。因みに現在では60-80歳前後に相当する。
4.マスコミの言及にも信憑性に疑問が多いに残る。ただしワイドショーなどでこぞって話題にする分、主婦向けには抑止力が働くかもしれない。

次回は大人の犯罪との比較、犯罪種類ごとの相関や世界各国との比較から日本の少年犯罪の特徴を見出したいと考えている。

 

【参考文献、及びHPサイト】
1.少年犯罪統計データ http://kangaeru.s59.xrea.com/toukei.html
2.少年犯罪は急増しているか http://kogoroy.tripod.com/hanzai.html
3.戦前の少年犯罪、管賀江留郎、築地書館、2007
4.少年犯罪は凶悪化しているか http://www.wako.ac.jp/souken/touzai01/tz0113.html

Pocket
このエントリーを Google ブックマーク に追加
LINEで送る
LinkedIn にシェア

コメントを残す